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「米一粒の力。親のない子供に愛を。ご支援くださる皆様、この電話で…」
トントン、トントン、コトコト、コトコト。
おいしい音が台所から響く。私が大好きな「ママごはん」の音。耳を台所に向けてテレビを見る私。お米もお母さんも、今は私のすぐそばに。
「お母さ~ん、お腹すいた!ご飯、まだ~?」
おいしい音のテンポが速まる。スリッパの足音もスピードアップする。もうもうと立ち昇る湯気。向かい合って座る私たち。湯気が薄らぎ、目の前は、ママごはん。
「いただきます。」
夏休み前にあれほど食べたかったママごはん。おいしい朝鮮族の料理を夢にまで見ていた。スプーンですくう、たった一匙の白いご飯だけで幸せを感謝した夏休み初日。次々に目の前に現われる料理に心が躍った3日間。夏休みを一週間も過ぎた頃には慣れて、当たり前に思うようになっていた。お米もお母さんも、もう平凡な日常。
エプロンをつけたまま、すすっと私のそばへにじり寄る母。いつものように、食べている私を見ながらニッコリと微笑んでいる。額を転げ落ちた汗がまつ毛にぶら下がっている。
「お母さんは食べないの?」
「お前が食べるのを見るだけで、もうおなかがいっぱい。」
今日も演劇のように同じシーンを繰り返す。
「ねえ、これ、食べてみて、おいしいよ。あ、これはどう?ねえ、これも食べて…」
「もういいよ。子どもじゃないんだし、自分で食べられるよ!」
「まあ、たくさん食べてっていうだけなのに…。」
ぷいと横を向く私に、母の表情が暗くなる。どちらが子どもなの?
「ねぇ、今日、何か嫌なことあったの?お母さんに言ってよ。」
ホカホカ炊き立てのご飯に水を入れてほぐしてしまう私を見た母の言葉。愚かに見えるほど、私のことを全て受け入れて理解してくれる母。
「ご馳走様でした。」
わかっているけど、わかっているのに、そんな母を後にして部屋に入ってしまう私。私のために流した母の汗を見たら、拭いてあげればいい。おいしいママごはんを食べたら、おいしいと伝えるだけでいい。いつの頃からか、そんな当たり前の感謝に消極的になっていた。
いや、もしかすると、私が表現しなくても母は分かってくれていると、私が勝手に思いこんでいるのかもしれない。
お母さんは、誰よりも気楽な存在で、私を最も愛してくれる人だから。お母さんは、私だけのオアシスで、私だけのゆりかごなのだから、私を愛するために生まれた人。そんなとんでもない等式が、知らず知らず頭の中で成立していたのかもしれない。
バカな私が母の愛をバカにしている。親近感と心地よさに甘えて大切さを見失っている。空気のような大切な存在。ううん、お米のような大切な存在。それも違う。「お母さんとホカホカごはん」の組み合わせこそが、心が温かくなる、世界で最も美しいハーモニーだ。
惜しみなく与える献身と、いつも喜んでくれる笑顔、忙しく汗をかく犠牲。私の人生のあまりにも基本的な存在で、欠かしたことがない存在だから、そこにいてくれることを当たり前に思って疎かにしてしまうのか。偉大すぎて目に入らない存在。
おかずなしのご飯一匙のぬくもりにこそ、本当の幸せを感じる。まるでお母さんの胸にギュッと抱かれているように…。
「お母さ~ん、ごはん!」
最も無邪気な一言。ずっと無邪気なままでいたい一言。でも大人になれたら伝えたい。
「お母さん、明日のご飯は私が作ってあげるよ!」
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