国際化には相互理解が欠かせません。相手を理解しないで、一方的に「発信」することは、百害あって一利なしなのです。
第四は「その場志向、歴史不問」です。国際化を語るさいも、その場のことしか目に入らず、将来への正しい見通しをもつために必要な過去の歴史にたいする自省ということが、ないがしろにされているようだということです。二十世紀に日本が歩んだ道、とくに加害者としての歴史には、今後の正しい道を見出す上での貴重な教訓が沢山あるのではないでしょうか。アウシュビッツからの生還者の一人シマンスキ氏は「過去を知ろうとしない人間は、残酷な過去をもう一度経験するよう審判される」と語っています。日本の加害者としての歴史にたいする自省ぬきの「その場志向」の繰り返しと積み重ねには、多くの自国民を犠牲にし、多くの他国民を殺したあの侵略戦争の道につながるものがあるように思うのは、わたしの杞憂でしょうか。
まだまだ第五・第六……とでてきそうですが、「抛磚引玉」というわけで、このへんで筆をおくことにしましょう。
いれずにせよ、わたしは日本の「国際化」が「国粋化」にならず、正しい「人際」をふまえた「国際」、平和と友好・繁栄につながる国際化、アジアの人々・世界の人々から歓迎される国際化であることを願っています。
(李順然著『日本・第三の開国――中国人記者のみた日本』(日本東京東方書店一九九〇年)より)
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