【観察眼】2兆ドルと20年を費やし、強権的な“灯台”の火はアフガンに潰えた

2021-09-03 17:40  CRI

 【観察眼】2兆ドルと20年を費やし、強権的な“灯台”の火はアフガンに潰えた

 現地時間8月30日夜、米国防総省は米軍のカブールからの撤退が完了したと発表した。これにより、20年にわたるアフガニスタン戦争が幕を閉じた。バイデン大統領は、この戦争のために米国が払った代価について「米兵2461人が死亡、2万人以上が負傷し、2兆ドル以上を出費した」と明らかにした。果たして、これほど大きな代価を支払って、どんな成果があったというのだろうか。

費やしたのは莫大なコスト

 アフガニスタン戦争における米軍側の死者数は、ベトナム戦争の約6万人には及ばないものの、第二次世界大戦後としては期間が最も長く、費用が最もかかった戦争となった。「2兆ドル以上」という金額は、2020年通年の米国の国内総生産(GDP)にほぼ匹敵する。米国の研究者は「退役軍人のケアや、戦後処理の実施など、関連コストは引き続き大幅に増加し、2048年以降にピークに達するだろう」と予測している。このコストを支払う羽目になるのは、次の世代の米国人たちだ。

 戦争では経済力が物を言う。この20年間、米国は1日当たり3億ドルをアフガニスタンに費やしてきたことになる。この戦争で大もうけした人間がいる。大量の兵器の購入やメンテナンスにかかった費用はすべて軍需企業の収益になった。この20年間で、ノースロップ・グラマンの株価は9.8倍に、ロッキード・マーティンロは9.34倍に、ボーイングは5.39倍に、ジェネラル・ダイナミクスは5.22倍に暴騰した。米国でもアフガニスタンでもなく、武器商人たちだけがこの戦争の勝者であった。

 2兆ドルをインフラに投資すれば何ができただろうかと考えずにはいられない。中国の高速鉄道の平均建設費は約1キロ当たり1億6000万元なので、2兆ドルあれば8万キロを超える距離の高速鉄道が建設できる。そして実際の中国の高速鉄道の運行距離は3万7900キロであるため、米国がアフガニスタン戦争に使った資金があれば、中国と同じ規模の高速鉄道路線を2つ建設してなお余ることになる。

生じたのは難民問題と再建問題

 軍需企業が戦争による恩恵を受けた一方でアフガニスタン国民は苦しい生活を強いられている。20年間続いた軍事行動を通して、米軍は現地に暮らす人々の生命と財産を大きく損なった。民間人は累計3万人以上が米軍の手で殺害されるか、米軍が引き起こした戦乱で亡くなっている。このほか、6万人以上が負傷し、約1100万人が難民となった。

 経済も疲弊し、国民の約72%が貧困ライン以下の暮らしを送っている。失業率は38%に達し、平均寿命は45歳にとどまってしまっている。農家の人々は途方に暮れて、タリバンに加わる。また、アフガニスタン前政府軍は兵士の給料を何カ月も滞納するほどだったのだから、タリバンの反撃に抗えないのも当然だ。

 こうして、過酷な戦争はアフガニスタンの社会構造と近代化の成果をほぼ破壊した。インフラ整備は完全に停滞し、それどころか既存の施設までもが破壊された。

 そして政権が交代し、情勢が混迷を極める中、アフガニスタン経済は銀行の倒産やインフレなどの打撃に直面している。英紙『ガーディアン』は「タリバンが速やかに資金を調達できなければ、市井の人々はカブールの街頭でパンを買うのも難しくなる」と報じている。国連の関連機関も「アフガニスタンは食糧や医療物資の不足に直面する」と警告している。さらに、新型コロナウイルスの感染拡大が続いていることから、現地の人々の暮らしは一層苦しいものとなるだろう。米国が撤退を完了させた後でも、アフガニスタンでは深刻な影響が続いている。

強権的な「民主の灯台」の火は潰えた

 2001年9月11日の米国同時多発テロの発生以降、米国は首謀者とされたウサマ・ビンラディン容疑者をはじめとする「アルカイダ」などのテロ勢力の脅威を一掃するため、世界規模の軍事行動をとり、アフガニスタン戦争とイラク戦争を開始した。アフガニスタン戦争の中でビンラディン容疑者は射殺されたが、それでも米国はテロを完全に撲滅することはできず、現地の人々を深刻な災難に巻き込み続けた。

 政治学者のフランシス・フクヤマ氏は、「冷戦後の覇権の頂点に立った米国が最も傲慢さを示した瞬間は、2003年にイラクに侵入した時だ。アフガニスタンとイラクを手始めに、中東全域を『改造』したいと考えたのだ。そして米国は西洋の民主的モデルをアフガニスタンに押しつけようと20年間にわたり努力したが、失敗に終わった」と指摘した。

 いかにヒトとカネを投じようとも失敗は避けられなかった。これが米国式覇権の宿命だったのだろう。米国の有識者は反省を重ね、「私たちにはアフガニスタンに対する根本的な理解が足りない」「ある国の経験を他国に直接的に応用するのは最悪な行為だ」といった発言をしている。

 この失敗は米国にとって、ベトナム戦争における失敗の繰り返しである。米国の研究者は「失敗の根源にあるのは、覇権を行使して自身の民主化を世界に強制することにある」と分析する。

 アフガニスタン戦争の破綻は、世界の「民主の灯台」を自負する米国にとっては強い警告である。2兆ドルかけようとも、20年かけようとも、失敗に終わる。この失敗から米国の政治家は何を学んだのだろうか。米国による民主主義の強引な輸出にもはや前途は無い。(CRI論説員)

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