北京
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2021年は中国にとって大きな意味を持つ年です。中国共産党の創立100年目――即ち「一つ目の『百年の奮闘目標』」(建党100年目までの“小康社会”の完成)の目標年に当たり、また「二つ目の『百年の奮闘目標』」(新中国成立100年目までの強く豊かで民主的・文明的な調和のとれた社会主義現代化国家の構築実現)においても、重要な前進の一年になります。
そして、もう一つの注目は「国民経済と社会発展の第14次五カ年計画(2021-2025年)」の発足年となることです。第14次五カ年計画は今年の全国人民代表大会で審議・採択される見込みとなっています。
これに際して、日本語部独自の評論コーナー『観察眼』では、第13 次五カ年計画(2016-2020年)期間の躍進を振り返り、この先の5年を展望するシリーズ「振り返れば歩んで来た道 新たな旅路は続く」を企画しました。
中国の新年に当たる春節の時期に合わせて、ジャンル別に配信していきます。
評論シリーズ「振り返れば歩んで来た道 新たな旅路は続く」
第10回 新しい五年、中国経済は引き続き世界とともに成長遂げる
中国では1953年から、五年おきに経済と社会の向かうべき方向を示す政策文書が制定されてきた。第13次五カ年計画から第14次五カ年計画へと移行する中、中国経済の成り行きが内外から高く注目されている。
◆「2つの百年目標」が合流する2021年を迎えて
13回目となる五カ年計画は2020年に無事終了し、新たな5カ年が2021年にスタートすることになっている。2021年はまた、中国共産党が掲げる「2つの百年目標」(中国共産党創立100周年の2021年までに小康社会を全面的に完成し、中華人民共和国の成立100周年の2049年までに富強・ 民主・文明・調和の美しい社会主義現代化強国を築きあげる)が合流し、1つ目の目標実現から2つ目へとバトンタッチしていく歴史的な節目としても注目されている。
これまでの五年間を振り返れば、世界経済が「100年に一度の大変革」の時期を迎え、後半になってコロナ禍の影響もあったにもかかわらず、中国経済が依然として注目されるべき成果を収めた。
2020年、中国は主要国の中で唯一プラス成長ができた国となり、国内総生産(GDP)が100兆元の大台を突破し、世界経済に占める割合が17%にまで伸びた。伸びたのは決して数字だけではなく、発展理念、運営モデル、経済成長を支える原動力など深いレベルの変化にも表れている。経済構造を例に、コロナ禍の影響が影を落とした2020年を除けば、近年、消費が経済成長に対する貢献度が約60%のレベルに維持されている。また、2010年から2019年、中国の輸出依存度が26.2%から17.3%に、対外貿易の依存度が49.4%から31.7%にまで下がり、貿易面からみても、内需という内なる成長力が強まっている。
◆新しい五年 中国経済は強靭性を保つ
新たな5年を展望すれば、「中所得国のわな」、人口高齢化のスピードアップ、市場環境の改善などの面での懸念があるものの、中国経済には依然として高い強靭性がある。その強靭性はいくつかの面にあらわれている。
まずは供給について。確かに中国の生産年齢人口は減少し始めている。一方、中国の発展にはしっかりとした積み重ねがあり、産業も労働集約型から技術集約型へと転換しつつある。教育や技術開発に対する投資も高まりつつあり、生産技術と効率の重要性が日増しに顕著になっている。また、交通インフラの中長期計画について、中国は2035年までに、全国の主要都市を3時間で結ぶ総合的立体交通網の整備、外国との輸送については、周辺国へは2日以内、その他の世界主要都市までは3日以内で届くようにすることを目指している。
それに近年、ビジネス環境の改善に向け各項目の改革が行われていることも、中国が投資市場としての魅力を強めている。14億の人口(うち、9億が生産年齢人口)、1億2千万社の市場主体(事業体)を有する発展途上国として、中国は各国の企業にとって人気の投資先であり続けている。2020年、海外直接投資(FDI)は世界全体で前年から42%縮小した中、中国へのFDIは4%増の1630億ドルになり、中国は米国を抜いて世界最大の外資投資先となった。日本企業の中国投資の意欲については、日本貿易振興機構(ジェトロ)が2020年10月末~12月初に行ったアンケート調査では、回答を得た2722社の中、「今後、海外で事業拡大をはかる国・地域」という質問に対して、中国を挙げた企業の比率が48.1%となり、引き続き首位を保っている。
次は、需要について。14億の中、ミドルクラスの規模は3億人から4億人に上り、この数は米国の総人口に相当する。中国は世界一の消費市場となっている。小康社会の全面的完成及び貧困脱却堅塁攻略戦の勝利と成果の定着に伴い、潜在的な市場の需要が一層顕在化するに違わない。なお、国家統計局が2月28日に発表したところでは、2020年の全国住民の可処分所得の伸びは、不変価格比で、経済の伸びとほぼ同じ歩みを保っており、内需を下支えする力強い材料になっていると言える。
都市化率の向上がもたらす需要も大きいものになる。第14次五カ年計画の期間中、中国の都市化率が65.5%に上り、保守的に見積もっても、もう8000万人以上の人口が農村部から都市に移住する見込みだ。こうしたプロセスにおいても、おびただしい量の需要が顕在化するとみられている。と同時に、都市圏、北京・天津・河北地域一体化、長江デルタ地区、粤港澳大湾区などの地域発展戦略も人口や経済の空間構造の最適化、有効投資と潜在的な消費需要の顕在化において役割を果たすことができる。
さらに、世界とのつながりについて。2020年、中国は世界で唯一貨物貿易がプラス成長を実現した主要国であった。現在、中国は地域的及び多国間自由貿易協定に積極的参加し、グローバリゼーション、貿易自由化を唱えると同時に、自身のポテンシャルを掘り下げ、国内・国際の双循環という新たな発展構造の構築に取り組んでいる最中である。注目すべきことは、新たな発展構造では国内の大循環が主体だとながらも、あくまでも国際と国内の双循環が刺激しあうことが強調されている。いうまでもないことに、こうした内外の循環ができることにも、より高いレベル、より高い質の対外開放が不可欠であろう。
◆経済成長は中国の世界への約束
2020年9月、習近平主席が国連総会一般討論のビデオ演説で、2030年までにCO2排出量を減少に転じさせ、2060年には正味の排出量をゼロにする「カーボンニュートラル」(ネットゼロ)の実現に向け動きだすことを表明した。こうしたことを背景に、グリーンと低炭素が「第14次五カ年計画」の重点的な取り組みの一つとなっている。期日通りに目標達成できるかどうかは、第14次五カ年計画期間中の取り組みが極めて重要だと言える。ちなみに、中国のグリーン経済の生産高は2025年までに12兆元に上り、GDPの約8%を占めると見積もられている。そういう意味では、中国経済の成長は自身が世界に対して行った厳かな約束でもある。
新たな5年の旅路が始まった。道の前方には、誰もが予想だにできない内外からのチャレンジがある。中国経済と世界経済を船と海に例えるならば、すでに帆をあげた中国経済の船は、今後も世界経済の大海原で引き続き開拓し、各国とともに手を携えて前進していくに違いない。(CRI日本語部論説員)