【観察眼・2020総括編】④「両山理論」は人類の共通認識 環境改善で成果の中国、これからも

　激動の2020年が終わりを迎えようとしています。世界は様々な未曾有の事態に直面しましたが、危機の中でも相互に理解することが大切なのだと、改めて噛み締める一年でもありました。

　日本語部オリジナルの評論コーナー「観察眼」ではこの一年、中国国内の話題を紹介し、中日間の問題や国際問題への見解を示すことで、読者の皆様に中国への理解を深めてもらおうと努めて参りました。

　2020年の締めくくりとして、今年のキーワード「新型コロナ」、「中日関係」、「環境保護」、「電子ビジネス」、「対外開放」、「貧困脱却」をテーマに、評論員たちがこの一年を総括します。

第四回テーマ「環境保護」

「両山理論」は人類の共通認識 環境改善で成果の中国、これからも

　“緑水青山就是金山銀山（澄んだ川と青い山こそ金山であり銀山である）”習近平国家主席が、中国共産党浙江省委員会書記であった2005年当時に初めて提唱したこの環境保護の理念は、「両山理論」としてこの国ではすっかり定着したようだ。新型コロナウイルスの影響を受けた2020年においてすら、中国は経済成長を実現させつつ、環境改善にも努めてきた。

　中国各地の川や湖の水質は明らかに改善された。特に重視されているのが、「母なる川」とされる長江の保護だ。長江が通る省と市は、汚水・ごみ処理の強化、沿岸部の化学工場の移転・閉鎖などを通じて、汚染対策と生態環境の修復を進めている。中国政府は今後さらに、10年間（暫定）の禁漁を2021年内に実施すると発表している。長江の生物資源の衰退や生物多様性の低下を緩和することが目的だ。

　また、中国では今年も、重度の大気汚染が発生する日数が著しく減少した。鉄鋼産業の立ち遅れた生産能力の淘汰、石炭消費の厳格なコントロール、新エネルギー公共バスの保有量拡大などの実施によるものだ。生態環境部の発表では、今年1～11月、全国337都市で大気の質が「優秀」または「良好」だった日数の割合の平均値は87.9％で、前年同期比では5.4ポイント上昇した。また、PM2.5の濃度は前年同期比8.8％下落した。

　大気改善に関する中国の取り組みは、炭素排出削減の面でも効果を上げている。中国は2020年までに炭素排出量を2005年比40～45％削減するという目標を2年繰り上げて2018年に達成し、一次エネルギー消費に占める非化石燃料の割合を15％以上に高めた。これにより、二酸化炭素排出量の急速な増加に歯止めがかかった。2020年9月、中国の指導者は「2030年までに二酸化炭素排出量がピークに達し、2060年までに『カーボンニュートラル』が実現するよう努力していく」と宣言した。この目標は、「パリ協定」の「2℃目標」（産業革命以降の気温上昇を2℃以内に抑える）の下で2065～2070年に「カーボンニュートラル」を実現させるという世界の目標をはるかに超えており、世界全体での「カーボンニュートラル」実現を5～10年早める可能性がある。これらの取り組みは、パリ協定締結5周年を迎えた今年に「アメリカファースト」や経済至上主義を理由に同協定を脱退したアメリカとは実に対照的だ。

　国連環境計画（UNEP）は、北京の大気汚染対策についてまとめた報告書で、「北京は大気質の改善において目を見張るほどの成果をあげている。世界の他の都市や地域で、これほど短い期間にこのような素晴らしい成績を上げた例は無い。中国の経験は大いに参考になる」と評価している。また、米国の自然資源保護協議会で中国事業を担当するバーバラ・フィナモレ氏は、「中国はグリーン発展に力を入れ、持続可能な発展モデルを構築している」と述べている。日本国立環境研究所の秋元肇客員研究員も、「中国のグリーン発展理念は他の発展途上国の生態環境改善にとっての良き参考になるだろう」としている。

　経済と社会の発展の道筋において、環境や資源を犠牲にしてはならない――「両山理論」にも示された環境保護意識は、人類の共通認識となっている。新型コロナが猛威を振るう特殊な時期においても、また、経済回復という重い任務を担いながらも、中国は初心を忘れず、いつだって澄んだ川と青い山を目にできる美しい中国の建設、そして世界の環境汚染の解消を目指して努めている。それは2021年も、そしてその先も続いていく。（CRI日本語部論説員）