北京
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山西省平遥古城倉巷49号、300年もの歴史があるこの古い屋敷の中から、毎日トントンという音が伝わってきます。ここは山西省伝統工芸の金銀細工の工房です。先人からこの貴重な技法を受け継いだのが、職人の劉興東さんです。彼は長年、平遥古城、この伝統工芸を黙々と守り続けてきたのです。
今日、劉興東さんは結婚を控えた新婦のために銀の首輪を作っています。縁起物とされる銀の首輪には、めでたいという意味の「喜」の文字が施されていて、その下に、夫婦円満や幸せを意味する伝統的な図柄が彫られています。「首輪全体には花や鳥の柄があって、またボタンの花の透かし彫りがあります。ボタンの花は豊かさと高い身分を意味するものです」
山西省の伝統銀細工は、厚みや重みがあるのが特徴です。劉さんはこの業界に入ってすでに30年を迎えますが、その間、手作り伝統工芸が機械による加工に取って代わり、破滅的なダメージを受けた経験があります。苦しい時期がやっと過ぎ去り、いま、時間をかけて丁寧に作るという手作りの時代が再びよみがえっています。この世に一つしかない、すなわち手作りの独自性がその最大の魅力だと劉さんはいいます。
劉さんが父親について銀細工の作り方を習い始めたのは1980年代初めのことでした。 その後、修行期間を終え、25歳の時に独立して平遥古城で自分の一軒目の店を開きました。開店当初、商売はうまく行かず、途方に暮れて、品物を担いで、全国各地の骨董市を回った時期もありました。苦しい時期が続き、2000年になって、平遥古城にある銀細工の店がどんどんつぶれて、最後に生き延びたのは劉さんの店を含めて、わずか2、3軒でした。そして、厳しい時期を生き抜いた劉さんは2015年に無形文化遺産継承者に選ばれたのです。
「この工芸は古くから伝わる技法で、優れた伝統文化でもあります。金や銀細工の制作を通して、山西省独特の文化を残していきたいです。技法について分からなくても、みんな美意識を持っているから、政府の無形文化遺産担当機構を通して、ここに求めて来るのです」
現在、劉さんはこの工房で弟子らに教えています。ここには数々の巧みに細工された石彫りや木細工などが陳列されていて、工房はまるで美術館のようです。
「小康社会に向かう中国人の暮らし」、今回は無形文化遺産の伝承者、山西省平遥古城銀細工職人の劉興東さんのお話でした。お相手は王秀閣でした。ではまた来週。さよなら。(閣、CK)