北京
PM2.577
23/19
新型コロナウイルスが猛威を振るう中、中国政府は5月4日までに、150以上の国と4つの国際機関に医療用マスク、防護服、ウイルス検査キットなどの支援物資を提供したほか、17カ国に19組の医療専門家チームを派遣した。ただし、こうした対応に対しては、「中国はイタリアなど感染が深刻な欧州諸国に医師団を派遣し、医療機器を供与する『マスク外交』で存在感を誇示している」と批判の声も耳につく。批評する前に、ここでまず時系列に沿って事実を整理してみたい。
EUで最初に感染爆発したイタリアは、2月に入り、マスクや呼吸器など医療支援をEU各国に要請したものの、ドイツとフランスからの返答は「ノー」だった。いずれも、自国での感染拡大を不安視することから、医療用品の輸出を禁止したからである。そうした中、支援の手を差し伸べたのは中国だった。世界保健機関(WHO)がパンデミック宣言を行った翌日になる3月12日にも、中国からの医師団第1陣がイタリア入りし、18日には人工呼吸器や検査キット、医療用マスクなど計9トンになる医療物資も現地に搬入された。その時点、中国国内では新型コロナウイルスがまだしっかりと封じ込めた状態ではなかった。その上、中国経済も大きなダメージを受け、中国国家統計局の発表では、1‐3月期の国内総生産(GDP)の伸び率は前年同期比マイナス6.8%となり、1992年以降初のマイナス成長となった。そんな状況の下、自国の損得勘定だけで遠方のイタリアにまで医師団を派遣できるものだろうか。
今年1月、武漢で新型コロナウイルスの感染が拡大した後、武漢と友好都市提携関係にある日本の大分市から、防災備蓄用マスク3万枚が送られてきた。武漢市はその恩を忘れることなく、あれから約3か月後の4月23日に、5万3000枚のマスクを大分に届けた。「一滴の水のような恩にも、湧き出る泉で報いるべし」、中国のネットユーザのこの書き込みは、多くの人の心に響いた。困難な時にこそ助け合うべき。この互助の精神こそが、中国が世界で医療支援を行う本心である。(日本語部論説員)