北京
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人工知能を手がける中国の企業センスタイム社(商湯科学技術)は、日本の茨城県常総市に自動運転車のテストコース「AI・自動運転パーク」を開設しました。センスタイム社は、ここを自動運転技術の開発拠点とし、走行テストをしていくとしています。また、この施設は一般にも開放され、地元に住む人々も最先端の技術を体験することができるとしています。
去年12月、常総市の神達市長もこの「AI・自動運転パーク」を視察し、世界最先端の情報通信技術(ICT)を有するセンスタイム社が開発拠点を設立したことに感謝の意を表し、「自動運転車は、交通システムに革命的な変化をもたらすだけでなく、地方の交通問題の解決にも資すると思われる。センスタイム社の助力のもと、自動運転車が常総の路上を走行するところを見ることが待ち遠しい。それが実現するなら、われわれはいかなる支援も惜しまないつもりだ」とコメントしています。
また、センスタイム社の副総裁兼センスタイムジャパン社社長を務める労世竑氏も、「この拠点を通じて常総市との協力を深め、さらなる雇用を生み出し、新たな技術革命を行い、歴史ある常総市をスマートシティへと変えていく」と述べています。
このセンスタイム社は、特定の地域ですべてをシステムが操作することが可能となる、レベル4の自動運転を目指し、一昨年から日本の自動車メーカー「ホンダ」と提携、技術の開発に取り組んでいます。そして、この1年あまり、上海や日本などで試験車両の走行実験を重ね、すでに段階的な成果を上げており、両社は、2025年までに、一般道での走行が可能な自動運転車両の量産を始めるとしています。共同研究開発では、センスタイム社が持つ「移動体認識技術」と、ホンダの「シーン理解」「リスク予測」「行動計画」といったAIアルゴリズムを融合、AIアルゴリズムを学習するための大規模演算技術や、AIプログラムを車載コントローラーへ実装する技術を共同研究し、複雑な交通状況の市街地でも走行を可能にする、より高度な自動運転技術の開発を目指すとしています。また、両社は、高精度地図ではなく、画像解析技術を基に自動運転技術の開発を進めており、車両が高精度地図でカバーされていない区域に入っても、自動運転機能が使用できるようになるということです。
さて、このセンスタイム社は2014年に設立され、2016年には日本法人を設立、とても歴史のある企業とは言えないのですが、日本の主力産業である自動車や製造業、インフラなどの分野に向けて技術提供を行ってきた他、ここ数年では、顔認識や、自動運転などの分野で成果を上げている、ある意味この業界を代表するような存在です。
というのも、中国の自動運転技術はこの2、3年間に発展し始めたもので、自動運転については、自動車産業と人工知能、モノのインターネット、次世代コンピューター技術などが融合して生まれるものだと捉えられているからです。グーグル、バイドゥ(百度)、アリババ、トヨタ、フォードなど、複数の業界の大手企業が自動運転技術の研究開発に携わっていることからもわかるように、自動運転は自動車と交通のスマート化の主な発展トレンドであり、各国各業界が競い合う分野にもなっていますが、実は業界の歴史は浅く、それゆえに、まだまだ発展の余地のある分野とも言えるのです。
そして、一言に自動運転とは言いますが、具体的にはオンラインマップ、車両検知センサー、車両制御システムからなっています。前述したように、車両制御は膨大なデータが必要になりますが、世界中で年間販売台数が1000万台を超える自動車最大手の製品でも、リモートサービスシステムを搭載しているのはわずか一割にとどまります。そんな中で、中国の自動車工業はそれほど強い実力を持っておらず、データの獲得すら難しいのが現実です。しかし、中国はIT分野、特にオンラインマップのサービスではアドバンテージを持っています。バイドゥ(百度)とオートナビ社(高徳)は豊かなオンラインマップサービスの経験をもとに、金融市場から調達した資金で自動運転の分野に参入しており、これは様々な業界からの参入を予見させる動きにもなっています。
とは言え、最先端のテクノロジーの粋をあつめた分野である自動運転は、米グーグル(Google)社、アップル(Apple)社、テスラ(Tesla)社など、世界でも有数のテクノロジー企業も長期にわたって投資を続ける、依然として技術開発難度が非常に高い分野です。一方、自動運転技術は既存の技術を再編して生まれたものでもあり、新しい技術はほとんどないながらも、海外では自動運転車による交通事故が起きるなど、安全性と安定性をどのように確保するのかという点に関心が寄せられるようにもなっています。本当に安全で、人間の手のかからない便利な移動手段となりうるのか、自動運転の業界は、ある意味人類の夢を乗せて、今未来へと進んでいます。
そこに、あくまで後発の中国の企業らが有効なソリューションを提供できるのか、そして今進んでいる事業がどんなイノベーションを実現できるのか、爆発的なポテンシャルを持つ中国の多くの企業には、今世界から多くの視線が寄せられています。