【CRI時評】アジアとヨーロッパの距離を縮めたもの

2018-10-20 18:26  CRI

 オランダのバッテリーメーカー「リチウム・ワークス」社(註1)がこの程、十八・五億米弗を投じて中国に巨大リチウムバッテリープロジェクトと中国R&Dセンターを建設することを発表した。これは中国の国内市場開放に向けた最新の動きであると共に、欧州の対中関係緊密化に向けた最新の動きでもある。

 それに続くように、五十一のアジアと欧州の国家、並びにEU、ASEANの指導者らが十九日、二日にわたって開かれたASEM(註2)首脳会議の終了後に声明を発表、開放的な自由貿易に尽力し、あらゆる形の保護主義に対抗していく旨を発表した。彼らはまた、イラン核合意への支持を表明し、世界の気候変動に対応していく旨を宣言している。

 アジアと欧州という二大地域の国家がここまで結びつきを強めたのは何故なのか。

 原因の一つには、米国の凄まじい勢いを伴う貿易保護主義の手法が世界に大きな課題を突きつけたからだろう。米国は大量の中国製品に追加関税を課し、EUに対しても市場開放の歩みが遅すぎると非難を行っている。

 米国は他にも、日本やEUとの交渉の際においても、「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」に倣う形で「非市場経済国家」とのFTA締結を制限するポイズンピルを書き加えるとしている。しかし、その一方で、経済学者らは、この手法は世界経済の断片化を招くと警告する。

 最近の一年内には、米国はすでに世界貿易機関(WTO)上級委員会の裁判官任命を否決し、WTOの紛争解決メカニズムが麻痺の間際に追い込まれている。また、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)離脱後、米国はユネスコや国連人権理事会からも脱退している。そして今回、万国郵便連合からも脱退すると仄めかす。

 トランプ米大統領のロジックに照らせば、米国が続々と脱退を行う理由はただ一つ。それは米国が公平な処遇を受けることが出来ていないという点だ。ワシントンのこうした「アメリカ・ファースト」政策とその手法は、日に日に世界の多国間貿易システムの安定と正常な推進を脅かすものとなっている。

 その被害者であるアジアと欧州諸国は、そこは当然のことながら手を結んでこの深刻な状況に向き合う必要が出てくることになる。今回のASEM会議の主催者である欧州諸国が設定した会議のテーマ「欧州とアジア――グローバルパートナーが挑む世界の課題」は、それを明確に物語っている。

 モゲリーニ欧州委員会外務・安全保障政策上級代表(註3)は、「ASEMサミットは『トランプ氏に反対する』の為の大会ではなく、EUも特定の人物を標的にした会合は開かない」とする。一方、アイルランドの『アイリッシュ・タイムズ』紙は、「これはASEMがトランプ氏に発した強いシグナルだ」と評する。

 ASEM首脳会合と時を同じくして、EU、ロシア、中国、ノルウェーはWTOに対して米国の鉄鋼アルミニウム関税に関し訴状を提出、WTOにトランプ政権が国家安全保障を理由に行った輸入鉄鋼アルミニウム製品に追加関税を課す措置について調査を行うよう求めた。これはアジア・欧州諸国が集団で単独主義に「ノー」を突きつける動きであり、彼らが世界の多国間貿易システムの擁護に向けた共同戦線を立ち上げたことを示すものだ。

 他にも原因としては、米国の破壊的な貿易保護主義に反対する他にも、アジア・欧州諸国がアジア・欧州大陸の「相互連結」に関心を寄せているという面がある。今回の会議の前には、EUからユーラシア相互連結に関する新戦略が発表されている。

 中国と欧州によるバージョンの異なる「一帯一路」構想と相互連結新戦略は、中欧協力に新たな好機と枠組みを提供するもので、ユーラシア大陸の一層の融合を後押しするものだ。統計によれば、現在中欧間の毎日の貨物貿易額は十五億ユーロに達するという。ここに相互連結の強化が加わることは、双方の経済発展と人民の実益をより一層促すことにつながる。

 さらに言うならば、世界の気候変動やイラン核問題などについて、アジア・欧州諸国は目下の世界情勢に影響する重大なテーマに関して、類似もしくは同様のスタンスと政策を有している点がある。そして米国は世界で唯一パリ協定を脱退した国家だ。イラン核問題についても、アジア・欧州の双方が、イラン核合意を擁護することは国際協定への尊重、国際社会の安全、平和と安定につながると考えている。

 ルールを基礎とした国際秩序と、WTOを中心とする多国間貿易システム、そして未来を見据え、未然に危機を防ぐ責任感ある国際社会は、アジア・欧州双方の期待に合致し、世界の利益に合致するものであり、アジア・欧州の五十一国家は世界人口の六十%、GDPの六十五%、世界貿易総額の五十五%を代表するものだ。そこから発せされる声には、ワシントンもだんまりを決め込むわけには行くまい。(CRI論説員 許欽鐸)

 [註]

 1)  リチウム・ワークス (Lithium Werks B.V.)。オランダに本社を置くバッテリーシステム生産企業。https://lithiumwerks.com/

 2)  アジア欧州会合(Asia-Europe Meeting)。アジア側参加メンバー(21か国と1機関)、欧州側参加メンバー(30か国と1機関)の合計51か国と2機関によって構成される。相互尊重と平等の精神に基づき、アジア・欧州両地域の協力関係を強化することを目的とする国際会合。 https://www.aseminfoboard.org/

 3)   フェデリカ・モゲリーニ(Federica Mogherini、一九七三年六月十六日〜)。現在欧州委員会副委員長兼欧州連合外務・安全保障政策上級代表(二〇一四年十一月一日〜)を務めるイタリアの政治家。。

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10月29日放送分
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