【CRI時評】多国間主義と単独主義、ルールと強権がぶつかり合う世界

　この数日、ニューヨークで開催された第73回国連総会は極めてエキサイティングな場となった。一方ではトランプ米大統領一人が「アメリカ・ファースト」「米国の国益を最優先する」とグローバリズムに反対を唱え、もう一方ではグテーレス国連事務総長をはじめとする大多数の各国代表が多国間主義の擁護と集団行動を訴える。多国間主義と単独主義、ルールと強権の角逐が、今まさに国連を舞台に繰り広げられている。

　今回の国連総会は、「全ての人に関わりある国連をめざして：平和で公正な，かつ持続可能な社会のためのグローバル・リーダーシップと共通の責任」を一般討論演説のテーマとしたもので、各国の指導者と代表者らがこのビジョンの下に意義ある提案を行うことが期待されていたのだが、トランプ米大統領はまたもや真っ向からこれに食ってかかった。

　昨年の総会の時と同様、トランプ氏は国連総会の一般討論演説にあたり、例の如く就任以来推進している「アメリカ・ファースト」を擁護する発言を行い、国連人権理事会、国際刑事裁判所等の多国間機関やイラン核合意等に批判を加えた他、イラン、ベネズエラ、ドイツに対する非難を繰り広げ、米国の「グローバリズム反対」の理念を明確にした。米メディアによれば、トランプ氏の演説は多くの国の代表らの笑いや遣る瀬無い仕草、顰蹙を招いただけでなく、広く批判と非難を集めたという。

　例えば、グテーレス国連事務総長は、世界が深刻な問題に晒される中、「常識に基づく集団行動」こそが唯一の解決の手立てだとし、マクロン仏大統領は各国に「強者のルール」の拒絶を呼びかけた。EUに至っては今後もイランとの貿易往来を続け、新たなペイメントシステムを導入し、米国の制裁を迂回することを宣言した。エルドアン土大統領は世界に平和と繁栄を呼びかけ、ラマポーザ南ア大統領は、各国が力を合わせてグローバリズムと国際貿易に反対する勢力を阻止するよう呼びかけた。また、王毅国務委員兼外交部長も、国連の国際問題対応における中心的役割を擁護し、揺れ動く世界により多くの安定した見通しを与えることを謳った。

　第73回国連総会において、米国の単独主義と強権政治がこれほど広範囲から集中砲火を浴びることは予期されたことだった。米国は本来第二次世界大戦後の国際経済秩序と多国間貿易システムの構築と関与の中心的存在だったにも関わらず、七十数年を経た今日、現政権は「アメリカ・ファースト」の名の下に極端な利己主義的振る舞いを展開し、TPP、パリ気候条約、イラン核合意から脱退、ユネスコや人権理事会等の国際機関からも脱退し、追加関税の手段を使って世界を相手に貿易戦争を仕掛けるようになった。これはいうまでもなく、その手で作り上げた多国間主義と国連憲章への最大の攻撃行為であり、人類の文明と社会の発展に大きなハードルを突きつけるもので、世界からの反対と攻撃は避けようもない。

　国連は多国間主義の実践の中心となる舞台であり、単独主義を喧伝するパフォーマンスの場ではない、確かに、強権政治は今尚世界に存在する。しかし、国際秩序をより公正で理にかなった方向へと発展させ、運命を共にし、協力共栄を図って行くことこそが国際社会の考え方の主流の筈だ。第73回国連総会での激しいやり取りは、まさにこうした人々の求めるところと、この時代の行き着く先を反映したものだったと言えないだろうか。（CRI評論員　盛玉紅）