北京
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23/19
トルコの通貨リラが急落している中、米国のトランプ大統領は10日、トルコ産の鉄鋼とアルミニウムに対する輸入関税率をそれぞれ2倍の50%、20%に引き上げるとツイッター上で発表した。また米国財務省は先ごろ、トルコの司法大臣と内政大臣の米国国内での資産を凍結すると発表している。同盟国のトルコにこうした対応をする米国は、信頼や責任のある国と言えるのだろうか。
去年、シシリー島での先進7カ国(G7)首脳会議の後、ドイツのメルケル首相は「ヨーロッパ人は運命を自らの手でつかむべき」と述べている。
「米国第一」とは、他国の指導者を押しのけて自ら最前列の中央に立ち、また責任を排除し約束を破るということである。12か国での長年の交渉の末に合意した、環太平洋経済協力パートナーシップ(TPP)も、トランプ大統領は就任のわずか4日後に離脱を宣言している。また、気候変動を抑制するために世界各国が厳しい交渉を重ねて締結したパリ協定も、同じく米国は捨てたのである。世界最大級のCO2排出国が、自国の経済成長を阻害する、などと主張している。国連安保理の常任理事国である米国、ロシア、中国、英国、フランスにドイツを加えた6カ国が、2015年7月からイランと交渉を重ねてようやくたどり着いたイランの核合意についても3カ月前、破棄するとワシントンで発表した。また去年以降、ユネスコや人権理事会など国際組織からの離脱も発表している。国際公約をみだりに破棄し、国際的な責任も果たせない国が、他国の尊重や信頼を得られるのであろうか。また、中国とは、貿易戦を回避すると今年5月に合意したにもかかわらず、それを反故にして中国品に一方的に追加関税をかけ始めている。
世界のスーパー大国である米国は、いたずらに安全を求めて他国の安全を無視している。米国の来年の国防予算額は、2位以下の十数カ国の合計に匹敵する7170億ドルである。加えて、ペンス副大統領が先ごろ、宇宙での軍事化加速に向けて2020年までに「宇宙軍」を創設するため、追加支出を議会に求めた。
米国は、政治的にトルコを支配するために、同じ北大西洋条約機構(NATO)加盟国でありながら、一昨年のトルコの軍事クーデターに介入し、シリアでクルド人を支援した。そして、高額の関税や政府高官の米国での資産凍結などで、最大限に圧力をかけている。貿易問題については、トルコは関税をかけられた唯一の相手国ではない。米国は、世界貿易機関(WTO)を軸とする多国間貿易体制を交わして一国主義を狙い、国内法により相手国に対しペナルティー的な関税をかけている。このため、カナダ、メキシコ、ロシア、中国、トルコ、インドなどといった、同盟国や重要な貿易パートナーにも刀を向けている。
中東にはかつて、外交について「米国の敵になるのは恐ろしいが、友人になるのはもっと恐ろしい」といった言葉があった。米国は、ニセの証拠をもってイラクに侵入し、フセイン大統領を処刑した。エジプトのムバラク元大統領など、米国を同盟国であると固く信じていた中東の指導者の一部は、困難な時に切り捨てられている。
ドイツの調査団体「選挙研究グループ」が今年5月に実施したアンケートによると、「米国は信頼できるパートナーではない」と答えたドイツ人は82%、そして「ロシアの方が信頼できる」と答えた人は36%であった。(文責・国際鋭評コメンテーター)