北京
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23/19
中国向けのドイツ車が値上げの憂き目に遭っている。ここに来てドイツ車がトランプ氏の関税政策の初の犠牲者になったのだ。しかし、内訳を良く見ると、表向きに犠牲者となったのは米国に工場を設けているドイツの自動車企業なのだが、その実は米国の工場労働者の就業機会を失わせるという結果が見えてくる。
7月30日、ドイツのBMWは「コスト増加」を理由に、傘下の米国で生産し中国に輸出している2種類のSUVの中国市場での小売価格がそれぞれ4%と7%の値上がりを見せた。トランプ政権が多くの国にさまざまなラインで関税をかけ始めて以来、米国産のBMW車のパーツのグローバル購買価格が値上がりすることになったのだ。同時に、中国が報復関税をかけ始めたことで、7月6日から米国産の輸入車両にも新たに15%の関税に25%の追加関税、つまり40%の関税がかけられることとなった。これは、今後米国を原産地とする各国のブランド自動車の中国でのシェアが価格を原因に減少することを意味している。こうして、世界規模での生産の比率の高い自動車がまず貿易戦の犠牲者となったのだ。
米国の『Automotive News』が今年6月に発表した最新のチャートによれば、2018年の世界におけるTOP100の部品サプライヤーは、それぞれドイツ、日本、カナダ、スペイン、韓国、メキシコや中国など17カ国に及んでいる。一台の自動車には一万以上の部品が使われており、組み立てから完成車になるまで、世界のサプライチェーン上の様々なサプライヤーの細かな分業と協業が欠かせない。その中で、米国がその他の国の鉄鋼・アルミニウム製品に追加関税を課し、その後多くの国家が報復措置に出ることは、米国のGMやフォードを始め、ドイツのBMWなどの自動車界の大企業にまでその害が及ぶことに繋がる。
それとともにトランプ氏にフイにされたのは、米国の工場労働者ら、つまりブルーカラーの選挙民らの就業機会だ。独企業ダイムラーによれば、2017年に米国で製造した自動車の20%が中国へと輸出されていたものの、2018年第2四半期には中米の貿易摩擦の影響を受け、純利益が27%減少しているという。もしこの先も追加関税をかけつづけるようなことになれば、ダイムラー社は中国への移転も含め、生産拠点の配置について再考せねばならなくなるという。
BMWは米国のサウスカロライナ州に世界最大の自動車製造工場を設けており、今では米国自身の自動車ブランドを超える存在として、現地で9000人の雇用を創出している。その工場の周辺都市には、20以上の国から200以上の部品のサプライヤー企業の工場があつまり、それぞれが現地の雇用を創出している。去年、この工場で生産されたBMW社の70%は輸出向けのものであり、中でも約25%は中国に輸出されているという。『ニューヨーク・タイムズ』の報道によれば、BMW社はかつて商務省に対し、将来的に米国産SUVの生産コストが上がるようであれば、会社としてその投資と生産の規模を減らす可能性があるとの申し出をしているとのことだ。
英『フィナンシャル・タイムズ』は嘗て、専門家の話として、貿易戦が世界の自動車産業にもたらす影響は「完璧なる暴風雨」との比喩を紹介していたことがある。この「暴風雨」の「完璧」さは、様々な要素が組み合わさることで、世界の自動車産業への致命的な一撃として現れてくることになるだろう。(CRI時評評論員)