北京
PM2.577
23/19
一方的に貿易摩擦をエスカレートさせる米国の行動に対し、中国は3日、約 600億米ドルの輸入米国製品に25%から5%の4ランクの追加関税を課すことを発表した。この措置について、クドロー米国家経済委員会(NEC)委員長はメディアを前に、「中国はトランプ大統領の貿易に関する発言を実行に移す力を甘く見ない方が良い」と警告を発したほか、米国が近々中国の「不公平な貿易行為」に対応するためのアライアンスを結成し、圧力をかけていくとの予告を行った。
トランプ大統領が発言を実際の行動に移す能力に関しては、これまでを見る限り、中米貿易問題であれ、朝鮮半島の核問題についてであれ、実行力というよりはちぐはぐな行動をとる方に長けているようだ。
アライアンスの結成に関しては、クドロー氏によれば、米国は中国の「不公平な貿易行為」に圧力をかけるアライアンスだとしている、メンバーには欧州連合、メキシコ、日本、豪州が加わり、北米のFTA交渉が順調ならば、カナダもその一員に加わるとしている。
ここで言わなくてはなるまい。クドロー氏の所謂アライアンスは「妄想」に近く、下手をすれば米国にとっての次の「幻覚剤」にしか過ぎないものだ。時間だけをとって見ても、このどうやっても数年は掛かる交渉が、彼の頭の中ではまるで数週間で片付くような話をしているからだ。
米国と欧州連合の交渉を見るが良い。英『フィナンシャル・タイムズ』が報道したところでは、欧州連合と米国は「貿易交渉のための交渉」を始めようとしており、いま大きな問題にぶつかっているという。農業だ。7月25日に発表された米欧が貿易摩擦を棚上げにするとの声明でも、欧州連合側は農業を交渉内容から外している。長年にわたり、欧州連合は米国の農産品を拒み続けており、欧州の大国フランスなどは、農業について交渉を始める用意はないとしている。
また、メキシコは中国と同じく発展途上国であり、ここ数年は対中貿易を強化することで米国への依存度を低減しようとしている。カナダはと言えば、米国との貿易戦があることから、未だに米国とメキシコとの「北米FTA」の再交渉に加わっていない。日本や豪州にしてみても、中国は最大の輸出先であり、両国の対中貿易はいずれも黒字だ。さらに、2015年、中豪はFTAを締結している。中国は豪州最大の貿易黒字相手国であり、現に2017年の対中貿易黒字は約280億米ドルに登っている。更には、8月3日、欧州連合のモゲリーニ外交・安全保障政策上級代表も、シンガポールで、欧州連合は中国を主要且つ重要な戦略パートナーとしており、中国を対象とするいかなる政策アクションを起こすことはないとの発言を行なっている。
こうして見てくると、クドロー氏の「対中圧力アライアンス」は、問題解決の手段というよりも、「幻覚剤」と呼んだ方が良い存在にすら見えてくる。もし逆に、米国が貿易戦を諦め、中国、欧州連合、日本など、世界の主要な経済体と膝を付き合わせ、WTO改革について協議を行い、世界の多国間貿易システムの正常な運行を確保するよう働くならば、こうした貿易摩擦は全てWTOの枠内で有効に解決することができ、世界の全ての国に利益をもたらすことができるはずだ。
(CRI時評評論員 許欽鐸)