北京
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26日、マドリードでサンチェス首相と会談したマクロン仏大統領(左)
米国のトランプ大統領は25日、米国を訪れた欧州連合(EU)のユンケル欧州委員長と会談しました。2時間にわたる会談の後で双方は、交渉を行っている間は報復関税の追加をしないと合意しました。これにより、大西洋両岸で過熱化していた貿易摩擦に、休止符が打たれました。
しかし、トランプ大統領が提出した「関税ゼロ・非関税障壁ゼロ・政府補助金ゼロ」の措置に関する米国と欧州の発表内容には相違があります。
トランプ大統領は26日、アイオワ州での集会で、「ここにいるあなた方にヨーロッパの扉を開いた。大きな市場を与えた」と発言しました。ちなみに同州は2016年の総選挙でトランプ氏を支持していた州の一つですが、アンケートの結果によれば、支持率は減少傾向にあります。
トランプ大統領が「開かれたヨーロッパの扉」を喧伝する一方で、当のEUは「交渉内容に農業は含まれていない。声明で言及した事項が全てだ」と示しました。
フランスのマクロン大統領は環大西洋貿易投資連携協定(TTIP)という巨大すぎる協定に対し、マイナスの見方を明らかにしており、「貿易協定はバランスの取れた、互恵的な基礎に成り立つものであるべきだ。農業が貿易協定に盛り込まれてはいけない」と述べました。
スペインのサンチェス首相は「スペインは一国主義に反対し、国際貿易において、ある経済体が自らの政策と基準を相手国に強要することに反対する」として、EUの農業政策を守る意を示しました。
なぜ、欧州と米国の農業問題における意見は正反対なのでしょうか。
農業は、大西洋両岸の貿易におけるデリケートな分野だと言えます。双方はみな、各自の農業生産を守ろうとしています。データによりますと、EUは農業に毎年680億ドルの補助金を与えているのに対し、2016年、米政府は農家に約330億ドルの補助金を与えたということです。
欧米間の農業問題での対立が、3年間にわたって行われたTTIP交渉が失敗の要因の一つだとされています。欧州は米国の一部農産物のEU市場への輸出を禁止しようとしていましたが、米国にこれを強く反対されています。米国の遺伝子組み換え技術による農産物の輸入をEUは禁止しています。
EU加盟国の指導者は、トランプ大統領が提出した「関税ゼロ・非関税障壁ゼロ・政府補助金ゼロ」に農業を盛り込むことを拒否はしましたが、交渉継続を約束しています。
米国の大豆栽培
しかし中国の対抗措置によって生まれた米国の大豆輸出の難題を、果たしてEUが解決できるのでしょうか。
ブルームバーグ・ニュースはこれに否定的な答えを示し「欧州市場は米国の大豆栽培農家にとっての消費力を持っているが、それでも中国とは比較にならない。昨年、中国の米国からの大豆輸入の貿易額が123億ドルだったのに対して、EUの数字は16億ドルにとどまっている。2018年と2019年の欧州の米国の大豆に対するニーズは1530万トンと見られ、中国の6分の1以下となっている。トランプ政権は中国との貿易戦で報復措置を招いた。米国農家への経済的損失や、トランプ大統領と共和党議員たちへの政治的圧力はEUだけでは緩和できない」と報道しています。
また、EUの担当者は「米国からの大豆輸入を増やすことを認めたが、具体的な数は欧州の市場によって決められるものだ」と示しました。
さらに、米国の雑誌『Mother Jones』は「米国の大豆はすでにEUの輸入量の3分の1を占めている。輸入を増やそうとも、その効果は限られる。米国産大豆の大幅な値上げがなければ、米国の大豆栽培農家が黒字経営を実現することは難しい」と指摘しました。
農家にとって、安定的な輸出市場の確保は重要な問題です。しかし、トランプ政権が物色している欧州の新市場は、中国に拒否された大豆を引き受けるだけの能力を持っていません。310万もの農場主は、数十年を費やして得てきた中国市場を失いつつあります。その損失は補助金だけでは到底補えるものではありません。
「CRI時評」論説委員:呂暁紅
(翻訳:殷、謙)