北京
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23/19
トランプ米大統領は24日、米国と中国、欧州連合(EU)及びその他の国々との間でますますエスカレートしつつある貿易戦争を乗り切るため、最大120億ドルの農業支援補助金を支給することを発表した。
これまで米国は、多くの貿易パートナーに貿易戦を仕掛ける理由の一つとして、それらの国々が対米輸出商品にいわゆる政府補助金を支給しているという点を挙げていた。しかし、ここに来て、ホワイトハウスも補助金の拠出を始めるというのは、まるでブーメランではないか。トランプ氏のこうした行動は、「貿易戦争には敗者しかなく、勝者は存在しない」というエコノミストたちの警告を実証する結果となっている。
ホワイトハウスが納税者の巨額な資金を農業の補助金にまわす行為は、世界の貿易相手国の商品に報復関税をかけたことで、多くの国から報復を招いたことによる必然的結果と言える。中でも、アメリカの農業経済ベルトは、各国の報復措置の重点的標的の一つとなっている。米国の農民らはトランプ氏がしかけた貿易戦争の犠牲者となり、今、ホワイトハウスが理性を失い、横暴な関税政策を導入したツケを払わされる結果となっている。
世界最大の農産品輸出国である米国の2017年の農産品輸出額は過去最高となり、貿易黒字も213億ドルに達している。しかし、貿易戦争開始以来、EU、カナダ、メキシコ、中国を含む貿易相手国は、米国産農産品への報復関税の発動を余儀なくされている。米国農務省もまた、これらの対抗措置が米国産の農産品に110億ドルの損失をもたらすという試算を出している。
米国はこれまで、他国の補助金政策について、世界貿易機関(WTO)の規定に背くものだとして非難を続けてきた。しかし、現在、ホワイトハウスはなんと納税者が納めた税金を使い、自らが不法と看做してきたことをやるようになっている。ある意味、これは今年11月に行われる中期選挙に向けての人気取り対策でもある。
しかし、ホワイトハウスのこうした補助金政策は、問題の解決をもたらすものなのだろうか。自由貿易を擁護する米農場経営者の組織「ファーマーズ・フォー・フリー・トレード」の責任者は、「農場経営者に必要なものは契約であり、補助金ではない。契約さえあれば、安心して将来計画を立てることができる」と語る。
これまで、トランプ氏は「貿易戦争は米国を利するもので、米国にとっては貿易戦争を仕掛けるのも勝つのも容易なことだ」と高をくくっていた。しかし、今日この結果が示すように、事の成り行きは彼が考えていたほど簡単なものではない。米政府が農業支援策を発表することは、一連の問題を引き起こすことが必至だ。現に、製造業、エネルギー産業、石油ガス産業向けはどうするのか、支援策導入の基準は何なのかと、その決断を疑問視する声も上がっている。
現地メディア「ニューヨークタイムス」も、「貿易戦争のせいで、アルミニウムや鉄鋼製品を大枚を叩いて購入せざるを得なくなった製造業者や、ハーレーダビッドソンの生産ラインの海外移転で失業した労働者、貿易戦争の影響でバーボン・ウイスキーのメーカーへの補助金は要らないのか」と社説で問いかけている。
もしも、米政府が貿易戦争で影響を受けた全ての産業に引き続き支援を行うならば、トランプ政権は多くの課題にさらされることになる。財源の問題、補助金拠出の合法性も問われることになるだろう。米政府による120億ドルの農業補助金の合法性についても、多くの国がWTOに提訴することが予想されている。
アナリストは、こうも分析する。米政府が農家に補助金を拠出することで関税戦争を続けていくことは、米国の国際貿易におけるダブルスタンダードをあらわすものであり、こうしたドンキホーテ式のやり方が他の国にもたらす数多くの不確実性を反映するのみならず、世界の多国間貿易システムに害をもたらし、自国にも由々しい混乱をもたらすものだと。
「CRI時評」論説員