国際舞台への復帰を果たした伝統工芸品「景泰藍」

2018-07-21 14:39  CRI

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【毎週土曜日にお送りしている「チャイナビジョン2018」。この番組では、中国共産党第19回全国代表大会以降の中国社会の変化に焦点を当て、変容を遂げる中国の様々な表情を取り上げてご紹介しています。】

 今回は、改革開放40年の荒波を経て、さらに輝きと存在感を増し続ける伝統工芸品「景泰藍」の世界をご紹介します。

 今週のお相手は私、朱丹陽です。

 伝統工芸品として知られる「景泰藍」は、習近平国家主席が2013年に外国の指導者に贈呈したことを皮切りに、APECに出席した際にも各国の首脳らに、2015年の反ファシズム勝利70周年記念の際には国連に、ロシア大統領との会談の際にはプーチン大統領にそれぞれ贈呈されました。外交の舞台に頻繁に登場するようになった中国の伝統工芸技術の結晶「景泰藍」は、一気に世界の注目を浴びるようになり、国内外で高い人気を博すようになりました。

 伝統工芸の一つである「景泰藍」は、計画経済の時代には外貨収入を得る手段の主力選手の一つでしたが、改革開放政策施行後の90年代の後半からその勢いに陰りが見えるようになりました。ですが、今世紀に入り、習近平主席が提唱する新たな時代に入ると、再度中国を代表する贈答品として選ばれ、再び外交の舞台への復帰を果たすようになります。舞台の主役的存在だった景泰藍が、一度は衰退の道を辿り、再び前線に復帰するまでの約20年間、その業界とその製造に携わる職人たちはどのような道をたどってきたのでしょうか。

 先ごろ、これら国家を代表する贈呈品の多くを手がける伝統工芸の大家張同禄氏の工房に伺い、お話を伺うことができました。工房では、娘さんで弟子としても活躍している張エイさんが、景泰藍の辿ってきた運命を語ってくれました。

  1.  張さんの音声 

 「1958年、北京を代表する景泰藍、堆朱彫り、ヒスイ製品、象牙製品といった四種類の由緒ある伝統工芸品を束ねて、北京工芸美術製作廠が設立されました。当時、職人の数が少なくなり、技術も消滅の危険にさらされていたこれら工芸品も、この会社の設立によって安定期、発展期を迎え、1980年代後半までは外貨稼ぎの主力選手として活躍しました。中でも、景泰藍はエースともいうべき商品でした。それもそのはず、貿易の場では為替レートの影響を受けず、外貨ベースで取引されていたため、外貨を大量に必要とする時代にはとてもありがたい存在だったようです。私の父・張同禄もそんな時代に恵まれた一人です。60年代に正社員として採用され、デザイナーとして、腕ききの職人たちに厳しく技術を仕込まれました」

 外貨ベースで取引されていた「景泰藍」。秘密はその貴い身分にありました。景泰藍は、およそ700年前に外国から伝わり、皇帝に献上されたその日から、皇帝や皇室の調度品として指定を受けることとなります。その後、1911年に清王朝が滅ぶまで、紫禁城から民間に流出することはなかったとされるほど、寵愛を受けました。それもそのはず、景泰藍の胴体とその表面に模様のくぼみを貼り付ける材料には、当時貴金属であった銅が用いられました。当時、銅は国の専売品として扱われていたほか、金や自然素材からできた顔料なども高価なもので、必要とされる部品も少なくとも数千件に上るなど、当時としては非常に高貴な存在だったのです。

 工芸技術の面でも、銅の線で囲まれた縁起のよい草花、鳥類や人物をかたどったくぼみに、酸化コバルトなどを含む様々の色のエナメルを嵌め込んだり、熱で溶着させたりするなど、非常に複雑で数十人のチームワークが必要なものでした。これは世界にも例を見ない中国特有の技法で、一つの作品の完成には、技術の発展した今日においても、総計108の手順が絶対欠かせないとされます。

 「景泰藍」という名前は、明の景泰皇帝の時代の作品が最高だとされることから、その名がつけられたと言われています。日本では七宝をちりばめた焼き物を意味する「七宝焼き」として親しまれているもの、といえば、イメージも湧きやすいでしょうか。

 この「景泰藍」は、###③紫禁城から民間に流出するようになると、その胴体が薄く、軽くなるなど、その技法は簡素化され、大きく変化を遂げるようになります。そして、時代が下り、1990年代になると、③###社会環境も大きく変化し、景泰藍を取り巻く状況も大きな転換期を迎えます。改革開放政策が全面的に実施され、計画経済が市場経済へとシフトチェンジし、市場が競争の時代へとなだれ込む中、これまでのような国営工場では管理が追いつかなくなり、企業全体の経営も悪化していったのです。そんな環境の中で、すでにこの道の大家となっていた張同禄さんは自ら工房を立ち上げることを決心します。

  1.  張さんへの取材

 「当時は人材の流失が深刻な状況に陥っていました。経験豊かな職人や数十年間の作業を経てやっと一人前になった中堅技術者が、生計のために理髪師や自転車駐輪場の管理者に転向していきました。工場の責任者で最高技術者でもあった父は、できる限り多くの技術者を集め、人材の流失を最小限に食い止め、この業界を守ろうと工房を立ち上げたのです。伝統的なデザインと製造法を守り継ぎながら、時代にあった洗練されたデザインの開発と、生産技術の向上に努めたと言います。それから10年あまり経った現在、くぼみを作る技術にしても、釉薬を塗りこむ技術にしても、焼く技術にしても、全てが大きくレベルアップしました。色遣いもさらに豊かになり、今では故宮で飾られているものをはるかに超えるレベルになっています。そして、激変する市場経済の環境の中でも、私たちは市場に媚びることなく、一途に美を追求してきたことで、新しい時代のニーズにも応えられる商品ができるようになりました。その甲斐もあって、2013年以降はオークション市場での落札価格も高騰する一方で、今では2005年の5倍ほどまで急騰しています」

 その頃になると、政府も伝統工芸や美術品の保護に取り組み始めます。1997年、国務院は「中国伝統工芸美術保護条例」を公布しました。これに呼応する形で、北京市は2002年に「保護方法」を発表、百年以上の歴史を持つ伝統工芸美術作品に対して、工房設立の奨励や作品への製作者名の記入の許可、原材料の確保をはじめ、資金面での優遇措置を設けるなど、一連の援助策が実施されるようになりました。###⑤そしてその後、中国政府は2006年に無形文化遺産の登録制度をスタート、景泰藍はその第一陣として指定を受けることになります。⑤###

 そして、今世紀に入ると、2012年からは知的財産権保護や文化産業への援助がさらに強化されました。そして、芸術と美を追求する初心を貫いてきた張同禄氏の「景泰藍」はそこに見事な花を咲かせることとなり、習近平主席が国を代表する贈答品として選んだ「景泰藍」の作品のほとんどが、この工房の作品から選ばれ、世界の各国で大輪の花を咲かせています。

  1. 張さんの音声

 「###⑥父の作品がこれだけ選ばれるようになったのは、技法技法が最高レベルであることと同時に、『平和、順風満帆』といった、中国の伝統文化の精神が織り込まれているからだと思います。ビジュアルの美しさだけでなく、真、善、美を追求するこだわりが、人々を惹きつけるのだと思います。また、一方で、父はこの業界への恩返しの気持ちも込めつつ、⑥###『景泰藍』の技法がいつまでも受け継がれていくようにと、工房での人材育成に力を入れています。若手デザイナーに対しては、彼らが製作した作品をすぐに焼いてやり、現物を見ながら指導を行うようにしていますし、定期的に業界内の交流会を開いたりもしています。他にも、海外との交流も積極的に行っており、日本でも現代七宝の第一人者と呼ばれる高橋通子先生ともお付き合いがあります。また、中学校、大学で講演を行ったり、展示会も定期的に開くなどして、若者や市民に本物の景泰藍を触ってもらうなど、景泰藍の普及に力を入れています」

  中国独自の技法で作られる「景泰藍」は、時代の波とともに、絶頂期と低迷期をへて、再度世界の舞台に復帰するという激動の歴史を歩んできました。そして今、たゆまず夢を追い続けてきた「景泰藍」職人らの逞しい姿は、高品質の成長を掲げるこの新たな時代の中で、一層輝きを放つ存在になっています。

 <チャイナビジョン2018>、今回は、改革開放40年の荒波を経て、さらに輝きを増し続ける伝統工芸品景泰藍の世界をご紹介しました。

  今週のお相手は私、朱丹陽でした。

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李阳