イラク安全部隊のアブド・ガンバル指揮官は、13日、「バグダッドの安全を確保するため、イラクは、シリア、イランとの国境を閉鎖することを決めた」と語りました。この措置は、アメリカとイラクが講じたバグダッド安全計画の一部とされています。
バグダッド安全計画の実施を担当するガンバル指揮官は、このテレビ演説で、この決定を発表しましたが、いつ閉鎖するのかについては、具体的なスケージュールを明らかにしませんでした。ガンバル指揮官は、また、「国境が閉鎖されて72時間後、イラン向けの検問所4つ、シリア向けの検問所2つを開放する。ほかの検問所は、無期限に閉鎖する」と語りました。イラク安全部隊は、これに合わせて、バグダッドでの捜査活動を行い、また必要に応じて、公共場所の管理を強めるとしています。
専門家は、「これらの措置は、イラク国内、特にバグダッドの治安情勢が悪化しつつある状況、またイランやシリアがイラクの武装グループに武器を提供していることをアメリカが指摘したのと関係がある」と分析しています。
イラク戦争勃発以来、米軍兵士の死亡者数は3100人に達しており、また2万人が負傷、戦争に投入した費用は数千億ドルにのぼっています。一方、イラク側でも、5万人が戦争や宗教間の衝突により死亡し、200万人が難民となっています。マリキ氏がイラク首相に就任した去年の5月以来、イラクは数回にわたって、バグダッドの兵力を増やし、米軍に協力したものの、治安情勢は改善せず、暴力事件などが、かえって増加する一方です。イラン、シリアとの国境を封鎖するのは、これまでの取り締まりが何の成果もなく、国内の情勢が悪化している中で取った非常措置です。
また、イランとシリアがイラクの武装グループに武器提供や軍事訓練を行なったことについて、アメリカが批判したことは、イラク政府に越境犯罪を撲滅しようとする考えに自信を与えました。イラク情勢について、アメリカ政府は、これまでの対イラク政策を批判し、イランとシリアが秘密裏にイラク武装グループを支援したことを何度も指摘しています。ホワイトハウスのスノー報道官は、「アメリカは、イランが政府了承のもとで、イラク武装グループに武器提供や訓練を行なったとの確実な証拠を持っている」と語っています。シリアは、かつて、イラクの暴力・テロ活動を画策しようとする外国人について、シリア国境を通って、イラクに潜入することを容認したことがあります。このような状況の中で、イラク政府が、シリアとイランに接する国境を閉鎖したことは、十分に理解できることです。
しかし、国境の閉鎖は、短期的には、越境犯罪を抑える効果があるとしても、実質的な効果はあまりないといわれています。長期的には、外国との貿易や人的往来が妨げられるだけで、越境犯罪が他のやり方に変わるだけという可能性が十分あります。
イラクの混乱した状況は、宗教的な矛盾や各派閥の衝突によるものです。国境の閉鎖は、バグダッドの安全さえ確保できず、かえって副作用をもたらすという見方が強まっています。(翻訳:李軼豪)
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