ハリリ元レバノン首相暗殺事件を調査していた国連の独立調査委員会は２０日、シリアとレバノンが暗殺に関与した根拠がある、と指摘する報告書を国連のアナン事務総長に提出しました。今日の時事解説はこれについてお話しましょう。

　伝えられるところによりますと、この54ぺージもある報告書は、今年6月中旬から、調査委員会が事件現場の調査結果と数百人の証人の証言に及んでいます。報告は「ハリリ元首相暗殺事件は規模が大きく、相当の資源と能力がある組織によって画策されたもので、この暗殺計画の準備は数ヶ月間かかった。今の根拠と手がかりは、シリアとレバノンが暗殺に関与したことを示している」などとしています。

　報告書は「一部の証人の証言、容疑者の供述それに手がかりがシリア治安当局者のこの事件への関与を示していることから、シリア当局には多くの問題について解釈する責任がある」とした上で、「シリア当局は調査委員会と限度のある協力を行い、一部のシリア側の関係者が調査を誤った方向に導こうとする虚偽の証言や記述をした」としました。

　報告書は同時に「ハリリ元首相が暗殺される前、レバノンのラフード大統領は爆発事件の容疑者と電話で連絡したことがある。シリアの首都・ダマスカスを訓練基地とするパレスチナ過激派・パレスチナ解放人民戦線もこの暗殺行動に関与した」と指摘しました。

　この調査報告書が発表された翌日、関係各方面は直ちに反応を示しました。

　シリアのダフララ情報相は21日、「この報告書には政治的目的がある。報告書が提出した情報はラフード大統領への攻撃だ」と述べました。

　一方、パレスチナ解放人民戦線は当日、ハリリ元首相暗殺事件に関与したという非難を否定し、この報告書はすべて間違った」との考えを示しました。

　他の報道によりますと、アメリカとフランスは国連安保理にシリア軍がレバノンから撤退した後、レバノン情勢に干渉し続けることやハリリ元首相暗殺事件に関与したことなどに関する二つの決議案を提出し、シリアに圧力を加えるため、国際制裁を発動するよう要求しています。

　これと同時に、アラブ世界で大きな影響力を持つエジプトは「ハリリ元首相暗殺事件の調査についてシリア側は国連調査委員会と積極的に協力する必要がある」と明らかにしました。

　また報道によりますと、アナン事務総長は調査報告書を国連安保理とレバノン政府に提出すると同時に、独立調査委員会の任期を12月15日まで延期することを提案しました。